新たなセクターへ参入
リスクを価値に変えたKJRMの挑戦
2015年4月、KJRMは資産運用会社として初めて他の資産運用会社の株式を取得しMIDリート投資法人の運用に参画しました。オフィスやホテルの分野に「後発組」として参入しながらも、ポートフォリオの再構築や、大型区画のリーシングなど運用実績を積み上げ、含み損の解消や資産価値の向上を成し遂げた軌跡がここにあります。
CHAPTER 01新たなセクターへの参入
2001年日本で初めて2つのオフィスREITが誕生した翌年、日本リテールファンド投資法人(JRF:JMFの旧商号)が日本初の商業施設特化型REITとして3番目に上場しました。当時REITといえばオフィスが主流でしたが、私たちは敢えて商業施設というフィールドで運用力を重視した差別化を図ってきました。2007年には日本初の産業用不動産に特化した産業ファンド投資法人(IIF)も上場し、当時まだ主流ではなかった物流施設をはじめ、インフラ施設や工場・研究開発施設といった専門性の高い分野への投資を進め独自のポジションを築いてきました。
そのような中、2015年にKJRM(旧三菱商事UBSリアルティ株式会社(MCUBSR))は、資産運用会社として初めてMIDリート投資法人を運用するMIDリートマネジメント株式会社の株式を65%取得。資産運用会社と投資法人の名称を「MCUBS MidCity」に変更し、オフィスやホテルといった新しいセクターに参入しました。
参画前のMCUBS MidCity 投資法人(MMI)の資産規模は、大阪のオフィスビルを中心に1,570億円(12物件)。そのうち、大阪ビジネスパーク(OBP)に隣接して所在する、「ツイン21」と「松下IMPビル」の2物件がポートフォリオの約60%を占めていました。また、ポートフォリオ全体の含み損は320億円でした。

この状況で、KJRMがオフィス運用できるのか、ポートフォリオの集中リスクや含み損を解消できるのか、そんな投資家様からの懸念もありました。
しかし、旧MIDリートマネジメント(現関電不動産開発株式会社)メンバーと共に、上場後初の公募増資、ポートフォリオの分散、退去区画の早期埋め戻し、投資法人債の発行、AA―格付けの取得、インデックスへの組入れ、投資口分割など、あらゆることを実施しました。
その結果、参画から約2年でポートフォリオの含み損を含み益へと転換、投資口価格も上昇。また、後述する2018年の資産の入替によって、ポートフォリオ集中リスクも改善。現JMFと合併する直前の2021年2月期には資産規模2,876億円(26物件)、参画前(2014年12月期)と比較して、1口当たり分配金の上昇率は+72%、1口当たりNAVの上昇率は+55%まで成長させることが出来ました。
こうした数々の成果によって、オフィス運用に対する投資家様の懸念は解消され、私たちの運用力への信頼が確かなものとなりました。
CHAPTER 02不可能を可能にする力
2017年、ポートフォリオ分散を進めるため、全体の約10%を占める「松下IMPビル」の売却案が浮上しました。ただし、単純売却では収益が大きく減少することから実現に向けて高いハードルが存在していました。
当時、外資系の参入などにより売買市場が活況を呈しており、この取引を実現させるために、徹底した議論や検証、交渉が重ねられました。この結果、2018年に松下IMPビルと含み損を抱えていたもう1物件、計2物件(譲渡価格合計287億円)を、東京圏の大型オフィスビル1物件(取得価格221億円)と入れ替える取引が実現し42億円の含み益を創出。ポートフォリオの分散も進展し、参画時に掲げたOBPに所在する2物件の割合を約60%から30%以下にするという目標も達成しました。
この取り組みは、旧MIDリートだけでは、成しえなかったことであり、KJRMが参画したことで、不可能を可能に変えた瞬間でした。

CHAPTER 03リスクをチャンスに未来を切り開く
「ツイン21」は、1986年竣工、地上38階・地下1階の2棟から成るオフィスビルで、うち1棟はシングルテナントが長年入居していました。2006年にMIDリート投資法人が取得して以降、同テナントから賃料減額要請が続いていましたが、KJRM資本参画後は、賃料増額が実現。しかし、2022年春、同テナントは2024年3月末と2025年9月末の2段階で合計約12,000坪の退去を決定しました。MMIは2021年に合併しJMFとなったことで、同テナントの集中リスクは低減していましたが、一部の投資家様からは不安の声もありました。ただ、私たちは同テナントの賃料がマーケット賃料よりも低いことから、埋め戻しによる増収が見込めるとポジティブに考えていました。
完全退去までの期間を活用し、リーシングチームを結成。また、テナント入替タイミングによる収入減少リスクに備え、2022年7月に1物件の売却を決定。テナント退去時期に合わせて、契約締結の2年後から4期に分けて売却益を先行して確保しました。
最終的に、退去前にほぼ全区画の埋め戻しが完了。これにより、確保していた売却益は投資主へ還元し、また、目論見通り賃料収入や資産価値向上が実現したことで含み損も解消。加えてOBPエリア全体の価値向上にも貢献する資産へと生まれ変わったのです。

私たちは、常に「できるかどうか」ではなく、「私たちだからこそできる」と信じて挑戦を続けています。一般的にリスクと認識されることも、私たちはそれをチャンスに変える力があります。こらからも、投資家様の期待に応え、変化を恐れず価値創造への歩みを止めることはありません。この歩みが、私たちだけでなく、業界やエリアの未来を切り拓く原動力となるために。