築古物件の価値向上
壊すより100年活かすKJRMの選択
1974年竣工の商業施設「Gビル南池袋01」。私たちはあえて“壊さない” という選択をし、2024年12月にリニューアルしました。
この投資によってNOI利回りが1.3%上昇し、鑑定評価額も前期比26%増、環境に配慮しポジティブ・インパクトも取得。
ここに至るまでには、独自に育んだ運用経験と多くの人の専門知識を結集させ最適解を追求した結果です。
CHAPTER 01最善は何かを考え抜く
日本都市ファンド投資法人(JMF)の物件には、物件毎に「カルテ」があります。
半年に一度、各物件の方針を確認し、価値向上策を議論します。
池袋駅から徒歩3分、明治通り沿いに立地する「Gビル南池袋01」。地下2階、地上8階建ての商業施設は1974年に竣工、2024年に築50年を迎えるこの物件の価値を如何に最大化するか。競争力が単純に低下する「現状維持」という選択肢はなく、「建替え」「リニューアル」「外部売却」の3択でした。
具体的に検討を始めたのは2022年でしたが、2010年の取得時から、まずは、テナント様との契約満了期間を2024年に揃えるよう、すでに準備は始まっていました。
また2020年からは、物件単独の価値を考えるのではなく、エリアとしての価値を高め、地域と共創するため、まちづくり計画や都市整備の動向調査、区や外部団体、テナント様へのヒアリングといった下準備を始めました。
2022年に、3つの選択肢の具体的な検討に入りましたが、築古物件であれば定石の「建替え」については、建築費高騰による賃料バランスの課題がありました。また、「外部売却」については、物件立地と利回りの希少性から現時点での売却は現実的ではないとの判断に至りました。そこで有力となったのが「リニューアル」でしたが、そこには築年数という大きな壁が立ちはだかりました。
まずは、リニューアルするにあたり、築50年の物理的な安全性の確認が必要でした。
そこで、KJRMエンジニアリングチームと協議を重ね、一般的なエンジニアリングレポートのみならず、躯体のコンクリート抜きや第三者委員会評価等による詳細調査を実施することを決めました。
その結果、元々の建物スペックや、従前からの管理状況が良好だったこともあり、物理的耐用年数が112年と算出されたのです。
これにより、この物件をあと60年使用できるという物理的価値が証明された瞬間でした。
次に行ったのは経済的価値の証明です。KJRM経理チームの力を借り、会計上の耐用年数の延長について検証重ねました。その後監査法人の調査・ヒアリング等を経て経済的価値についても認められることとなり、ついに「リニューアル」が現実となったのです。


CHAPTER 02環境負荷を軽減して100年共に歩む

KJRMでは、2019年に産業ファンド投資法人(IIF)がJ-REIT初となるポジティブ・インパクトを取得。
その後、2022年にJMFでも初めて軽井沢に所在する物件で取得しました。この経験により、リニューアルに際して設計段階からコンサルティング会社が参画し、どのような取り組みがポジティブ・インパクトに該当するかを検討しました。
外壁ファサードの約40%や内装の壁・床にもリサイクル建材を取り入れるなど、リサイクル建材を積極的に活用し、その使用率を定量的に算出。また、欧州では「ライフサイクルアセスメント(LCA)」として、建築物の「ホールライフカーボン(生涯CO2)」の算定と開示が義務化される動きがあります。ただし、日本ではまだこの考えを採用しているところは少なく、算定できる機関も限られている中で、私たちは「ライフサイクルCO2(LCCO2)」の算出を行いました。しかも、新築ではなく建替えとリニューアルを比較をするといった過去事例がない中で、建替えよりもリニューアルの方が環境負荷が低いことを立証したのです。
おそらく、1物件のリニューアルにここまでやる資産運用会社はないでしょう。
その結果、ポジティブ・インパクトを取得し、業界内での先進的な事例として複数機関からも注目を集める事例となりました。


CHAPTER 03最後は投資家のために
今回のリニューアル計画の過程で、達成できなかったことがあります。
当初は、この商業施設に、オフィステナントを誘致し、複合施設にするという計画がありました。しかし、商業テナントと異なり、オフィスのリーシングにおいては、築年数が障害になるケース、築古物件を蘇らせ環境に配慮するといったコンセプトに賛同してくれるテナント様がいらっしゃっても、賃料目線が見合わないケースなどによって、結果として断念せざるを得ませんでした。
自分たちの理想を追い求めながらも、最後は、いかに収益を上げ、物件の価値を上げ、投資家に評価されるか。私たちの決断において、そこを犠牲にすることはありません。
2024年12月、本物件はリニューアルオープンしました。
3.7億円のリニューアル投資でROI24.2%、年間賃料90百万円増、NOI利回り8.0%(1.3%上昇)、鑑定評価額前期比26%増と、大きな成果を得ることができました。
長い時間をかけて取り組んできたこのチャレンジと成果は、関係した多くの人たちの専門知識と経験によって、最適解を考え抜いた結果です。
この経験は、これから先の新たな物件に応用され、また新しいチャレンジが生まれる
――これがKJRMの強さなのです。